ペットショップで何十万円の猫は飼えないけど、保護猫だったら元野良猫だし無料で引き取れるはず。
そう思っていざ保護団体の元で説明を受けて「譲渡費用が数万円」と聞き、驚く方もいるのではないでしょうか。
詐欺なのではないかと身構えてしまう事もありますよね…

そこで今回は、こんな事をまとめました。
- 元野良猫なのにどうしてお金が掛かるの?
- 譲渡費用はどれぐらいが適正?
- タダで引き取る方法はないの?
それではどうぞ。
目次
前提!「安いから保護猫」という考え方はやめよう
まずは大前提。
『ペットショップで血統書付きの猫を飼うと何十万もするから保護猫を貰おう』と考えているのであれば、その考え方は少し変えた方がいいですね。
血統書付きでも血統書付きでなくても、猫が健全健康に生きてくために必要な費用は変わりません。
むしろ、野良猫時代にどんな生活を送っていたか分からない保護猫の方が、保護されてから必要な検査や処置が多いのです。
保護団体や保護ボランティアさんは、全て自己負担の上で、必要な検査や処置を行っています。
そしてその保護団体やボランティアさんは「前の飼い主」という立場ではありません。
これからあなたの家族になるであろう猫を保護し、出会うべき家族に代わって猫の手当てをし命を守ってくれた人。
自分に巡り合うまでにその子に掛った実費を負担する事で、保護団体やボランティアさんは今日も寒さに凍えている子をまた1匹救う事ができるんです。
保護してから里子に出すまでにかかる費用
そうは言っても、いきなり何万円も請求されてしまったら戸惑いますよね。
中には『野良猫なのに…』と思う方もいらっしゃると思います。
実際に、元野良猫の保護猫がどのような検査や処置を受け、その費用がどの程度なのか、実体験を元に説明します。

普通の野良猫で主にかかる費用は次の通り。
- 血液検査
- 健康診断
- 駆虫
- 必要であれば投薬
- ワクチン
- 去勢・避妊
詳しく説明します。
なお、ボランティアさんや団体により違いがあります。必ず行っているとは限りませんのでご参考までにご覧くださいね。
参考金額については、私の自宅近所の動物病院の価格を掲載します。
地域によって、また動物病院によって差があります。
野良猫保護後の血液検査や健康チェックの費用と必要性
保護団体や保護ボランティアさんのお宅には、家族を待つ多くの猫ちゃんがいます。
野良猫は、猫エイズ(FIV)や猫白血病(FeLV)といったウイルスを持っている事があるため、他の猫と隔離をする必要があるかどうかを判断するためにも、ウイルス検査をする事があります。
健康診断は保護した猫の健康状態のチェックを目視や触診聴診で行うだけでなく、必要であれば検便や尿検査などを行います。
我が家のかかりつけ医で設定されている金額と、日本獣医師会での実態調査の中で最も多い価格帯を載せておきます。
掛かりつけ動物病院 | 日本獣医師会実態調査 | |
---|---|---|
初診料 | 1,000円 | 1,000円~2,000円 |
ウイルス血液検査 | 6,000円 | 4,000円~6,000円 |
検便 | 500円 | 500円~1,000円 |
普通であればこの時点で8,000円弱かかる事になりますね。

駆虫や投薬が必要なケースと費用
元野良猫はノミや寄生虫が高い確率でいますので、いっぺんに駆虫できるお薬を使用します。
また猫の風邪を患っている子も多く、その場合は投薬や処置が必要になります。
猫風邪は人間でいう風邪よりもウイルスが強く、くしゃみや鼻水といった症状だけでなく、結膜炎や口内炎といった症状が出やすいのです。
結膜炎は失明に、口内炎は飲食が出来なくなるなど重症化するケースがあるので注意が必要です。

掛かりつけ動物病院 | 一般的な価格帯 | |
---|---|---|
駆虫 (レボリューション6%) | 1,600円 | 1,500円~1,800円 |
風邪の場合の薬 | 1,000円~1,500円 | 1,000円~2,000円 |
保護猫の予防接種の費用
猫の予防接種には「3種混合」「5種混合」「7種混合」があります。
数字がより大きい方が多くの病気を防げるため良いには良いのですが、その分金額も高くなる上に、1度摂取すればいいというものではありません。
猫は完全室内飼いが基本です。
そのため3種混合ワクチンを接種するケースが多いでしょう。
保護団体やボランティアさんの元では、生後2~3ヶ月の段階で予防接種の1回目を済ませている事が多いです。

掛かりつけ動物病院 | 一般的な価格帯 | |
---|---|---|
3種混合ワクチン | 4,500円 | 3,000円~5,000円 |
5種混合ワクチン | 7,000円 | 5,000円~7,500円 |
どちらかを接種します。
保護猫の去勢手術や避妊手術の必要性と費用
去勢手術や避妊手術に関して、私自身は絶対に必要だと考えています。
発情期の、(人間にとって)問題行動を抑える事や猫のストレスを緩和し、猫と人間双方にとって快適に暮らすことが出来るだけでなく、特定の病気のリスクも減らす事ができます。
雌猫は避妊手術をしない場合、生涯で6~7回程度出産します。
そしてそれぞれ2~6匹の子猫を産みます。
もちろん避妊や去勢を子どもの猫にも行わなければねずみ算式に増えて行きます。
多頭飼い崩壊現場も、最初はオスとメス1匹ずつだったはず。不幸な猫を増やさないためにも、去勢や避妊は必要ですね。

保護団体やボランティアさんは、避妊や去勢を済ませてから里子に出す事が多いです。
もちろん、あまりにも小さな猫は避妊去勢前に里子に出すケースもありますが、私の経験上、保護団体やボランティアさんの元で避妊去勢を済ませてもらった方が、飼い主の負担は少なくて済みます。
掛かりつけ動物病院 | 一般的な価格帯 | |
---|---|---|
オス猫の去勢手術 | 15,000円 | 10,000円~15,000円 |
メス猫の避妊手術 | 20,000円 | 20,000円~25,000円 |
保護猫が里子に出るまでの費用まとめ
ではここで、今までの情報をいったんまとめてみます。
※検便や風邪の場合の薬代のような流動的なものを省きます。
※メス猫で想定します。
主な金額 | |
---|---|
初診料 | 1,000円 |
ウイルス検査 | 6,000円 |
駆虫 | 1,600円 |
3種混合ワクチン | 4,500円 |
避妊・去勢手術 | 20,000円 |
合計 | 33,100円 |
健康状態の良い猫でも軽く3万円程度かかるという事ですね…。

動物病院でかかる費用だけじゃない。保護して里子に出すためにかかっている費用
でもこれだけではありません。
- 餌代
- トイレの砂などの消耗品
- 捕獲機
- ケージ
- キャリーバッグ
- 猫を保護するための部屋
- 猫を保護するための施設の光熱費
- 猫を保護する現場に出向く際の交通費
少なくともこのような費用がかかっているんですよね。
里子として引き受ける猫にかかった実費ぐらい、私たち里親が負担するのは当たり前の事だと思いませんか?
譲渡費用はどれぐらいが適正?
保護団体やボランティアさんが、野良猫を里子に出すまでにどのような処置をしているのか、そしてその金額についておわかりいただけたと思います。
実際は地域や保護団体・ボランティアさんによって金額はまちまち。
だからこそ、何万円も請求されると驚いてしまいますよね。

では、適正価格ってどのぐらいなのでしょう。
正直、保護団体やボランティアさんが掛かりつけにしている動物病院によって価格は様々ですので、適正価格とひとくくりにするのは難しいのです…
ですから、【実際にどんな事をして】【それに対する金額がいくらなのか】を全て明確にしてもらう事が大切。
実費負担での譲渡の場合、大抵の保護団体やボランティアさんは費用の内訳を説明してくれます。
ただ中には一律で譲渡している団体もあります。
譲渡費用が一律の場合は、譲渡までに何を済ませているかを確認しましょう。
個人的には、去勢と予防接種1回目を済ませている猫の譲渡費用が20,000円~30,000円なら、譲渡費用として高い訳ではないし、むしろボランティアさんが負担をしている可能性が高いと思います。
仮に自分で猫を保護し、1から動物病院に通い手当てする事を考えると、恐らく30,000円の出費では済みません。
無料で引き取る方法はないの?
どうしても、まとまったお金を出すのが憚られる…
そういう方が気になるのは「無料で引き取る方法はないのか」ということですよね。
考え方は人それぞれ。
例えばその数万円を飼育に充てたいという方もいるでしょうし、よくわからない人に数万円のお金を渡すこと自体に抵抗がある方もいるでしょう。
里子に出す側の思いで言えば『その程度のお金を用意できない人が今後猫を飼育できるのか』という事になってしまいそうですが、今回はそこはいったん置いておきましょう。
結論から言うと、無料で引き取る方法はあります。
- アレルギーや転勤などやむを得ない事情で早急に手離さなくてはならない個人から引き取る場合。
- 保健所(動物保護センター・動物愛護センター)から引き取る場合。
例えば家族にアレルギーが出て早急に手離さなくてはならなくなった個人の方が里親を探しているケースや、急な転勤などで手離さなくてはならなくなったケース。
こういうケースは引き取り手が見つかるだけで助かる!という場合が多いため、譲渡費用などは請求しない事が殆どです。
また保健所(動物保護センターや動物愛護センター)にいる子を引き取る場合も譲渡費用はかかりません。
しかしこれらの場合、ゆっくりじっくり検討をする時間はなく、少しお見合いをして数日以内に引き取りを決めなくてはなりませんので、その点だけは頭に入れておきましょう。
元野良猫なのにお金を請求された!と思ったら「保護猫が里子に出るまでの費用と譲渡費の相場」【まとめ】
それではまとめです。
- 保護団体やボランティアさんは「前の飼い主」ではありません。
- 仮に自分で猫を保護して1から飼育する場合、少なく見積もっても4万円以上のお金が掛かります。
- 保護する労力や病院へ通う労力も別途かかります。
- 譲渡費用として2万円~3万円は、ワクチンと去勢避妊済の場合は適正と言えます。
- ただし、ワクチン証明書と費用の内訳は必ず貰うようにしましょう。
- タダで猫を引き受ける方法もありますが、ほぼぶつけ本番で引き受ける事になります。
保護団体やボランティアさんは、保護猫活動を生業として生活をしているのではなく、他に仕事をして収入を得る傍ら活動されている方が殆どです。
その猫に掛った実費を里親に負担してもらう事で、何とか成り立っていると言えます。
「野良猫だからタダ同然で貰えるはずでは?」
そう考えていた方は、この機会にちょっとだけ考え方を変えて、『うちの子になる猫を助けてくれてありがとう』と思えるようになると、不幸な猫ちゃんがもっと減っていくのではないかと私は考えています。
良い猫ライフを!